世界各地で体験してきた Uber のローカライズ

7月の中旬から約2ヶ月間かけて、北米とヨーロッパの主要な IT 系の都市を訪問してきました。

その中で一番利用したサービスのひとつが、最近ブランドのリニューアルでも話題になった Uber です。
優れたサービスに求められる一つの大きな要素は、よく考え抜かれた、快適な User Experience です。Uber は “Celebrating Cities” を掲げ、地域でのローカライズに積極的に取り組んでいることでも有名です。現在80カ国にライドシェア・サービスを展開する Uber が、その思想をどのように各国に適応しているのでしょう。今回は各地で実際に体験した Uber の UI のローカライズついて紹介します。

Uberのローカライズ方針

Uber は、各国の法律・文化などに関しては理解やローカライズが足りず、それが理由でいくつかのマーケットで失敗したとも言われていますが、ここでは UI に限定してローカライズを分析しています。

現在 Uber は世界中で60ヶ国、400以上の都市に提供されており、それぞれの地域に適した形でのサービスを提供しています。
ただし、地域ごとに大きく UI を変更することはせず、コンテンツレベルの変更によるローカライズ方針をとっています。

メルカリの各国でのUI

メルカリの各国でのUI

逆に、海外展開にあたって大きくローカライズすることを判断した例としては、メルカリがあります。この意思決定、開発体制に関しては興味深い記事があります。

サービスの性質上、メルカリのユーザーのほとんどは自国でのみサービスを使うことになるため、その国のユーザーだけに UI 全体を最適化することが可能・必要だと判断したのだと考えられます。また、単に言語に最適化するのではなく、例えば同じ英語圏でも米国と英国で異なるローカライズをしています。つまり英国は独自のローカライズをするべきと判断したようです

なお、世界的なサービスは例えば英語であればニュージーランドなど、メインマーケットよりも小さなマーケットで新しい機能やUXをテストすることも多いので、そういう背景から(一時的に)異なる場合もあるでしょう。

日本とアメリカでのUberのUI

日本とアメリカでのUberのUI

一方、Uber も地元の競合サービスに慣れたユーザーを取り込むために、UI を競合に寄せることもできますが、現状は国を超えてもほぼ共通のUI を維持しています。これは Uber の利用者が地元のユーザーだけではなく、旅行・出張者もメインのユーザーと捉え、違う国でも共通の UI で安心して使える体験を重視しているからだと考えられます。実際、各国での初期のターゲットのアーリー・アダプターは、Uber を米国などの海外出張の際に使うビジネスマンなどだった背景もあるようです。

特に言語を含めた環境が違う地域でこそ Uber の安心感などの真価が発揮されるため、国が違ってもいつもと同じように使えることは重要な価値になります。実際に Uber の無い地域に行った際に地元のライドシェアアプリを使いましたが、初期の学習コストが高く空港で苦労しました。例えるなら、世界的なホテルブランドならばどこに行っても安心できる、そのようなブランドと体験価値を Uber は提供していると言えます。

では、Uber はどのように各地に合わせたローカライズを行なっているのでしょうか。

チップ文化による違い

ドライバー評価画面でのチップ

ドライバー評価画面でのチップ

以前、 Uber はチップが無い・悩まないでいい、というのが一つのウリでした。
しかし米国では社会的な圧力や競合企業の追従などの理由で 2017年7月 からチップが導入され、乗車後の評価の際に、チップの金額を決めるインターフェイスが表示されます。(日本などチップを支払う文化がない国ではチップのインターフェイスは表示されません)

チップは端数を除いた3段階が表示されているので、ユーザーは毎回何%を払うかを計算する必要がないデザインになっています。当然この3段階の金額は乗車料金によって変動しますが、端数を省いてシンプルにするために、一定金額までは固定の3段階のチップが表示されています。もちろん、独自に金額を入力することも可能です。

車両オプションの違い

Uberの国ごとの車両オプション

Uberの国ごとの車両オプション

上記は特に車両オプションが多かった3つの都市での比較です。
同じ国の中でも違いがあり、例えばアメリカ国内でもサンフランシスコとニューヨークでは異なる車両オプションがあるくらい、地域ごとにローカライズされています。また、地域によってオプションの「名称」も変えており、アメリカでは Black と呼ばれるものがイギリスでは Exec、フランスでは Berline と表示されます。

Uberの車両オプションの画面

Uberの車両オプションの画面

UI 上では左側にいくほど頻繁に使われる車両、右側にスワイプしていくほどオプションとして特別な車両が選べるようになっているので、日常使いでは無駄なタップなく使える設計になっています。右側に配置されている車両は台数も限られているため、実際にパリで Green(電気自動車)を利用しようと思いマッチングを待っていましたが、結局車両が見つからず使うことができませんでした。

Uberの車両ごとの配車時間の表示

Uberの車両ごとの配車時間の表示

この点に関して、サンフランシスコの Uber では各車両を呼んだ際の到着時間が表示されてるなど、他の国とは少し異なる UI が見られました。実験中の試みなのか、またはアメリカ国内で競合する Lyft では常に車両タイプごとの到着時間が表示されているため、そこに対抗するための施策だと考えられます。

料金体系、支払いの違い

Uberの国ごとの料金の比較

Uberの国ごとの料金の比較

上記は今回 Uber X を使った各地での1キロごとの料金と、物価の違いを考慮してビッグマック指数を参考のために表示しています。
日本では Uber X が使えないため、選択肢の中で一番安い Black(ハイヤー)の料金で出しているので良い比較ではありませんが、物価の違いを考慮してもかなり料金が高いことがわかります。この記事によるとタクシーだけで比べても、東京は世界で3番目にタクシーの料金が高いようです。

また乗車後の支払いに関して、昨年東南アジアに行った際には現地でクレジットカードを持ってる人がほぼいないため、現金決済への支払い対応をしていました。(その後、Uber は2018年3月に Grab に東南アジアの事業を売却しています)
日本でも京都府の京丹後市限定で、主に高齢者へのニーズに対応するために現金決済を導入しているなど、積極的に地域へ Uber を導入するために文化を理解し、カルチャーフィットさせる施策を取っています。

まとめ

今回、各国を飛び回る中で Uber の利便性と、地域へのローカライズを改めて実感することができました。
Uber はサービスの性質上、既存の産業や団体などからの反発を受けやすいため、より地元のユーザーに密着したサービスを提供しようとしており、最近では徐々にその成果が現れてきているようです。
2017年9月のロンドンでのサービス停止命令から今年6月の復活の際には、Uberを守る請願書に60万人が署名するなど、ユーザーを味方につけることで既存の法に対抗できる可能性を見せています。
ブランドリニューアルを実施し、新たな方向性を示した Uber の今後の展開に注目が集まります。