社会性を意識したガジェットの登場:新たなテクノロジーの潮流

アルゴリズムが抱える偏見殺人ロボット、フェイクニュースや AIの悪影響に関する記事などを見れば、テクノロジーに対して昨今とても厳しい目が向けられているのが理解できるだろう。

ケンブリッジ・アナリティカのスキャンダルのような話を聞くと、身近に使っている一部のテクノロジーが、その影響力の大きさが完全に理解される前に、あっという間にソーシャル化(広く普及して社会的な影響力を及ぼすまでに浸透)していたことに気づかされる。そのため、10-20年、いや100年後になって致命的な結果を招かぬように、新しいツールやガジェットは以前より注意深く検証されるようになっている。

昔はエンジニアやプログラマー、科学者などの専門だったテクノロジー領域が、今では政治家や選挙運動者、倫理学者、哲学者、心理学者、社会学者などの活躍を必要とする領域となった。政治家や学者たちは皆、テクノロジーの倫理と、より広範な社会におけるその意義を理解しようと努めているのだ。

この問題に関しては、悪いニュースばかりでもない。社会的に意識の高いテクノロジーの応用例も確実に増えているからだ。サンフランシスコで行われた TechCrunch Disrupt カンファレンスの展示場を覗くだけでも、崩れたバランスをリセットし、自社の製品を高尚な目的のために活用するという倫理意識を持った技術者たちが多数出てきていることがわかった。

多くのアルコール飲料ブランドを持つ大企業・ディアジオがスポンサーする Jaunt のバーチャルリアリティ体験、Decisions: Party’s Over では、パーティー参加者4人の足取りをシミュレーションすることで、飲み過ぎのもたらす危険を仮想体験できる。このVRは現代風に教訓をたれ、楽しみも度が過ぎたらどうなるかをバーチャルに体験して怖い思いをさせることで、性的暴行など実際に起こり得る恐ろしい状況を避けるようにユーザーの実世界での行動を抑制する。

そこまで説教じみていないものには、CityCop というスマホアプリがある。製作者によれば「犯罪に対抗するWaze」的なプラットフォームで、2つの役目を果たす。1つ目はアプリから直接、犯罪を報告するよう市民に促すこと。町内会の防犯活動が21世紀バージョンにアップデートされたようなものだ。2つ目は犯行に関するデータをソーシャルメディアや公的な犯罪レポートから取り込み、地図の上に表示すること。犯行をリアルタイムでクラウドソーシングを活かして更新していくのだ。何かあった場所は瞬時にマップに反映されるので、近くに住む住民や他から訪れている人々は、特別に注意したり近づくのを避けたりといった形で対処できる。(犯行を考えている悪い人に対しては、どこでみんなに見られているのか示し、プレッシャーを与えることができる。)

These images are iPhone screenshots of CityCop is a social app version of Neighbor Watch groups, aiming to help communities fight crime. (Image credit: CityCop)

CityCop は、町内会の防犯活動をソーシャルにしたようなアプリで、近隣コミュニティが犯罪に対応できる方法を提供している。(画像提供: CityCop)

 

CityCopはアメリカを含む4地域において既に活用されており、25万人のユーザーがいる。発明したナディム・クリはアプリをさらに多くの地域へ届けたいと考えており、最終的には警察など法的機関の役に立てられる日が来ることを望んでいる。このアプリは、テクノロジーとコミュニティーを見事に融合した例といえるだろう。

カンファレンスのメインステージでも、社会意識に関するサービスが脚光を浴びた。DNA企業23andMeは、新たに3億ドルをかけた4年間にわたるプロジェクトを製薬会社GSKと提携して進め、遺伝子調査を通じて新しい病気の治療法発見に取り組むと発表した。また悪名高い「スタートアップバトルフィールド」という名のピッチコンテストでは、D-ID(5位)のような、消費者のプライバシーに関する不安から生まれた会社が散見された。D-IDでは、画像に知覚可能な変化は加えずに、顔認識アルゴリズムで使われる写真中の生体データをAIを使って保護する。遺伝情報収集や人工知能という、恐怖をかきたてられることの多いメカニズムが、我々の病を治したりプライバシーを保護したりするというのだ。

This photo shows how D-ID protects the biometric data in photos and videos from facial recognition software. (Image credit: D-ID)

D-IDは顔認識ソフトの画像や映像におけるバイオメトリック(生体)データを保護する。 (画像提供: D-ID)

では我々は今、転換期に直面しているのだろうか?社会の既存価値を支え、補うような倫理的テクノロジーは生まれるのか?そうでなかったとしても、「Tech for Good: ソーシャルグッドのためのテクノロジー」の例に思いを馳せるのは重要である。ここで挙げた例以外にも、たくさんのアプリやサービスが存在することも忘れないで欲しい。なぜなら、恐怖心をあおるような態度やシニカルな意見が多い中で、これらは「AIシステムや関連テクノロジーは本質的に邪悪なわけではない」ことを示すものだからだ。犯罪や病気、個人の過ちのような、人類の抱える諸問題を解決するために、欠かせない要素となってくれるかもしれないのだ。

信用は失うのは一瞬だが、得るには時間がかかる。こういった技術が成功を収めれば、テクノロジーに関する一次元的で大げさな批判はひっくり返り、一般市民を安心させることに一歩近づけるかもしれない。

Good Gadgets: The rise of socially conscious tech by Fiona McEvoy抄訳