シリコンバレーの企業カルチャー: パネルイベントのレポート

サンフランシスコのAll Turtlesイベントスペースで、企業カルチャーの育成について語り合うイベントが開催された。参加者はカルチャーをスケールさせること、急成長する組織において価値観を育てること、などに関して専門家から学ぶ機会を得られたようだ。

パネルディスカッションの参加者は3名。パネリストにはAll Turtles共同創設者兼CEOフィル・リービン、行動経済学者でIrrational Labs共同創設者のクリステン・バーマン、そしてモデレーターは、Discoの共同創設者ジャスティン・ヴァンデヒーが務めた。ユーモアも忘れず、自らの経験や社員のエンゲージメントとモチベーションに関する分析を展開した。

経験に基づいた知恵

共同創設者兼CEOを務めたEvernoteを含むいくつもの会社で企業カルチャーの育成経験があるリービンは、まずアントレプレナーの直面する問題を解説した。「会社を起こすのは、非常に大変です。残りの人生すべてをかける覚悟がないことは、やめた方がいい。なぜかといえば、実際にどれくらいの期間をかけるかに関わらず、死ぬまでその状態が続くかのように感じるのは間違いないから。」

ただ経験を積むにつれ、難しい問題のいくつかを解決する有効な方法、雇用や雇った後にどう社員と一緒に仕事をするかなど、ベストプラクティスがわかってきたと言う。「マネジメントの主なテクニックとして私が磨こうと努めてきたのは、“困難な決断”と“嫌な決断”を一緒くたにしないこと。この2つを区別できない人が多いように感じます。“難しい決断=正解が見えにくいもの”と、“下したくない決断=答えはわかっているが、できれば選びたくないもの”、は違います。」これらはまったく別物だと理解することが、解決への第一歩になるのだ。

バリュー・プロポジション

次に効果的な方法論とは? バーマンいわく「行動経済学では態度や信念でなく、行動に焦点をあてます。社員に求めるのは、“誠実で正直に、というモットーを口にすること”、などではなく、“実際に行動として誠実さと正直さを体現すること”であるべきだと強調するようにしています。」

ダイバーシティは最初から

生産的な企業カルチャーを持続的に育成する際に重要な要素として、雇用における多様性が挙げられる。リービンは自社All Turtlesにおいて、この点を意識的に心がけている。「他のスタートアップでは、何でもできるだけ速く済ませよとのプレッシャーに負け、近道を選んでしまう会社が多いように思います。だから以前に同僚だった友達に声をかけ、“また一緒に働かないかい?”と勧誘するケースが多いのです。でもこれが重なると、自分と似たような層の人間ばかりが集まったチームで“内輪ノリ”になりがちで、新しい人材を見つけにくくスケールしづらい会社となってしまうのです。」

これはスタートアップ界で変えたい習慣の1つだとリービンは言う。「All Turtlesではどの職種においても募集をかけるたびに、強制的に知人でない求職者に目を向けるようにしています。外部のリクルーターを使い、女性を含め今までの社員に欠けていたり少なかった特性の候補者を集めることに注意を払っています。」

This is a photo of Justin Vandehey, Phil Libin, and Kristen Berman speaking on a panel.

協調を促すしくみ

自分たちがどんなカルチャーを目指しているのか気をつけないでいると、効率的かつ協力的にブレインストーミングを行うのが難しくなるという問題が浮上しがちだ。バーマンは「自分のアイデアというのは誰しも可愛いものだ」と話す。他にも良い提案があるにも関わらず、自分の意見に固執し、自分だけが正しいと主張する人は多い。「テストを行えば行うほど、直感が間違っていることは多々あることは確実だと気づくはずです。」これはアイデア・ジェネレーションにおいてとても重要な情報である。“間違ってもいいから、とりあえずアイデアを出してみる”、という姿勢がブレストには欠かせないからだ。

アメとムチのアメ部分

社員の奨励に関してヴァンデヒーが投げかけた質問に対し、バーマンはこんな体験談を語った。セールス担当者個々のタスク達成に対して少額の報奨金をもうけていたある会社でのこと。役員と話してみると、個人的なモチベーションは金銭的インセンティブよりも、インパクトがあり重要な仕事をやり遂げたという達成感といったやりがいの方がやる気につながると言うのだ。「他人はきっと金銭的なボーナスが嬉しいはずだと思いながらも、自分自身を動かすのはあくまでも(金銭ではなく)内発的な動機だと信じている。興味深い謎ですね。」

Discoでも社員のエンゲージメントにおいての報酬に関する自社リサーチを実施。企業の習わしとして金銭的報酬より有効なアプローチは、つながりや関係性を育むようなものであると結論づけた。

オープンで協調性の高い企業カルチャーを育てるには、思慮と相当の努力が必要だ。だがうまくいった際の見返りは、長くありあまるほどの価値がある。

パネルディスカッションの動画はこちら:

ICYMI: Disco’s panel on scalable company culture by Marie McCoy–Thompson 抄訳